2012年7月13日金曜日

物語り尽くすための展示会――writtenafterwards fashion photo exhibition “I find everyone 2011 5 / 5″(NETOKARU掲載版)




今年の5月5日。こどもの日。


原宿のVACANTでwrittenafterwards(以下リトゥン)による「ドミノファッション写真展2012S/S」が開催されたのをご存 知だろうか。内容は同ブランドが昨年発表した「秘密のファションショー 2012 S/S」(2011年5月5日に行われた)の最中に、2012 年5月5日へと日付が変えて撮影された未来写真を実際の日時に合わせ公開するイベントであった。

ドミノ写真展が一日限定の催しだったのにくらべ、長期間にわたり展示することを趣旨としたのが恵比寿のギャラリーショップI FIND EVERYTHINGで開かれていた「writtenafterwards fashion photo exhibition “I find everyone 2011 5 / 5″」だ。




壁一面に飾り付けられた色鮮やかなドミノ。

実はこれら、驚くことにすべて写真立てで出来ている。リトゥンは2012S/Sシーズン、会場へ招いた人々をモデルとしてショーに組み込む一風変わったコレクションを行った。写真立ての中に収められているのは約500人の参加者たちがランウェイを歩いている様子だ。

年2回行われるコレクションは各メゾンが翌年に販売する商品の見本展示会という側面が大きい。そこから分かるように、発表されたアイテムがそのまま 店頭に搬入されることはなく、顧客からの発注を受けて工場で別に製作がはじまり、商品としての体裁が整えられる。よって服自体が消費者の手に届くまでには どうしてもタイムラグが生じてしまうのだけれど、リトゥンのデザイナー山縣良和は提示から提供の間にある時間のずれを物語で繋げてみせた。

どのようにしてか。結末の先延ばしによって、である。
「I find everyone 2011 5 / 5」は昨年のショーのコンセプト抜きでは成り立たない展示会であり、新たな意図から行われてはいない。未来写真の公開日がショー当日のちょうど一年後に設 定されていたことからすれば、温めてあった案だと推測できる。あらためて言おう。ファッションショーにおいて取りざたされる特権とは“現場に立ち会うこと でしか共有しえない空気感”に由来するもの。この内部に籠ろうとする性質のために物語の持続可能性は時間の流れから一公演単位で制限を受けるのだが、山縣 は開いた幕がいつ閉じるのかをあらかじめ明かすことで性質の被膜に裂け目を生じさせた。

となると現在進行形の物語を一つのパッケージに収めるには思い出を語りなおす回想シーンではなく、語られている話題に区切りをつける句読点が必要になってくる。それが「I find everyone 2011 5/5」に割り当てられた役回りというわけだ。






長いようで短い時間差を埋めたのち、撮影された人々はエンドロールにあらわれた過去の――未来写真という設定を顧みれば――現在のわたしとして、もう一人 の自分の静止画と初めて向き合うことになる。写真に浮かぶ人々を眺めていて印象に残ったのは一様に見せる笑顔。装う事のいとおしさを伝え、流行の成り立ちや本質を伝えることという消費活動だけに留まらないファッションの楽しみ方だった。


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